こんにちは、いちもくです。
営業の仕事をしている人は、売れない理由を商品のせいにしたり、顧客のせいにしたことが一度はあるのではないでしょうか?
- 競合他社の商品の方が、品質も良くて安い
- 自社の商品は、認知度が低いから売れない
- 昔に比べると商品の買い替えサイクルが遅くなった
など、自分の営業力が足りないことを棚にあげて、誰かのせいにしてしまいがちです。
でも大抵の場合、売らなければならない商品やサービスには、何かしらの欠点や弱点があるもの。
営業の仕事は、こうした完全ではない商品を首尾よく売り込むことです。
ではどうすれば、欠点や弱点のある商品を喜んで買ってもらえるのでしょうか?
そのヒントを見つけられる本が「エスキモーに氷を売る」です。
2000年に出版された本ですが、今読んでも学べる内容が多い、マーケティングの鉄板本。
今回は、そんな「エスキモーに氷を売る」の重要エッセンスを、詳しく解説していきます。
「エスキモーに氷を売る」の概要
本書の中には、「エスキモー」も「氷」も出てきません。
著者のジョン・ポールストラが、NBA(全米バスケットボール協会)で観客動員数最下位だったニュージャージー・ネッツを、27球団中チケット収入伸び率1位に導いたというサクセスストーリーが描かれています。
「エスキモー」や「氷」という表現は、いわゆるメタファー(比喩)ですね。
エスキモーにとって氷とは、当たり前のように普段目の前にあるもの。
そんなものを、誰もお金を出して買おうとは思わないはずです。
本気でエスキモーに氷を売ろうと思ったら、どうすればいいのでしょうか?
まずは相手を理解した上で、知恵を絞る必要がありそうです。
弱小バスケットボールチームのニュージャージー・ネッツは、チケットが最も売れない「魅力のない商品」。
そんな球団の社長に就任した著者のジョンは、それまで培ってきたマーケティング施策を次々と展開していきます。
施策の内容は、マーケティングの基本に忠実な内容ばかり。
その日から実践できるような、当たり前のことしか要求しませんでした。
そんな当たり前のことを実践することで、誰も気づかなかったニュージャージー・ネッツの商品価値が明らかになっていきます。
自分たちが提供するものは、顧客によってどのような価値があるのか
今まで当たり前だと思っていたものを見直すだけで、価値がないと思われていた商品に新たな価値を見出すことができます。
低迷していた球団が変化していくストーリーは、まさに痛快そのもの。
若干皮肉の効いた、鋭い語り口で解説されている本です。
「エスキモーに氷を売る」の魅力
「ジャンプ・スタート・マーケティング」に沿ったストーリー展開
本書で紹介されているのは「ジャンプ・スタート・マーケティング」と名付けられた原則。
著者曰く、この原則の中のたった1つだけでも実践すれば、相手よりも有利な立場に立つことができるそうです。
もしも多くの原則を実行できるならば、エスキモーの人たちに氷を売り込むことさえ可能になる法則。
全部で17ある「ジャンプ・スタート・マーケティング」とは、
- 自分が誰かを見誤るな
- 顧客の購入頻度を高めよ
- 自分の商品のエンドユーザーの名前と住所を入力せよ
- 新しい顧客の獲得には、トップが率先して取り組め
- 小さな実験をすることで、大きな変化をつくりだせ
- いますぐ、革新的なマーケティングをせよ
- 自分のアイデアを上役に認めてもらうために万全の努力をせよ
- 「誠意ある販売」に努めよ
- 顧客がいるところへ行き、その場の雰囲気を「感じ」とれ
- 自社の商品に関心を持ってくれる人だけをターゲットにせよ
- リサーチに決定権を与えるな
- 年次報告書をクライアントに提出せよ
- 社内のスーパースターがやる気を無くす要素を排除せよ
- 意図的に”よすぎる”条件をもちかけよ
- バックルームをマーケティング・ツールとして活かせ
- お奥義の顧客と小口の顧客を区別せよ
- 経営がきびしくなったら、セールススタッフ(変動費)を増やせ
この17の項目は、本書の目次になっています。
各章ごとに、内容はストーリーで分かりやすく解説されています。
ジャンプ・スタート・マーケティングを一言で表すならば、
誰も欲しがらない商品を消費者に無理やり押し付けるのではなく、販売戦略を変え、作り直し、あるいは中身を入れ替えて、消費者が買わずにはいられないものにすること。
この原則を理解できれば、たとえ売れない商品の営業担当になったとしても、効果的な販売戦略を立てることができます。
社長が実践した戦略は、とってもシンプル
著者のジョン・ポールストラが、弱小チームの立て直しのために実践した戦略は、非常にシンプル。
まずは
「どうやったらチケットが売れるのか? どうすれば完売するのか」
という目的を達成することだけを考えました。
その答えの1つが、「消費者の欲しいものだけを売る」ということ。
弱小球団のニュージャージー・ネッツの試合なんて、誰もみたくないというのが本音でした。
人気のない選手のグッズは、誰も買いません。
そこで社長が決断したのは、
自社の商品(選手やグッズ)は売らない
ということ。
自分達のチームには、お金を払ってでも見たい選手はいない。
でも対戦相手にマイケル・ジョーダンのようなスター選手がいるのであれば、喜んでチケットを買う人も多いはず。
だったら相手選手を売り込むことでチケットを売ろう、というのがジョンの立てた戦略でした。
ただし、相手チームにスター選手がいない場合も考えられます。
そんな場合は、人気のある講演者を呼んで試合前に講演してもらうことにしました。
こうすれば、消費者が欲しいものだけを売ることができます。
相手が魅力的に感じていない商品を、そのまま無理やりに売ろうとするのではなく、顧客視点で価値を創り出し、それを魅力的だと思う顧客だけにアプローチする。
そうすれば、努力せずとも自然と売れ始めるんです。
さいごに
マーケティングを学んだことのある人は、
エスキモーに氷を売る
と似た表現に
エスキモーに冷蔵庫を売る
という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
極寒の地で、どうやって冷蔵庫を売ればいいのか。
その答えは、逆転の発想です。
エスキモーが暮らす地域では、食材を外に置いておくと凍ってしまうことが多いはず。
だから冷蔵庫があれば、食材を凍らせず新鮮な状態で保存しておくことができます。
住んでいる地域が違えば、冷蔵庫の利用価値はまったく違ってきます。
顧客目線に立って、その人が価値を感じるものを提供する
そんなマーケティングの本質を学べるのが、「エスキモーに氷を売る」です。
マーケティング担当者だけでなく、営業の仕事に携わる人が読んでおいて絶対に損はない名著ですよ。
それじゃ、またね。
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