こんにちは、いちもくです。
絵本『100万回生きたねこ』をご存じですか?
子供だけでなく、大人も楽しめる絵本として人気の本作品を描いたのは、佐野洋子先生。
佐野先生の作品には、人生において大切なことをやさしく諭してくれる絵本が多いんです。
それだけでなく、歯に衣着せない率直な物言いや、常識にとらわれない目線で世間を鋭く指摘したエッセイも多数出版しています。
今回は、そんな佐野洋子先生の作品の中から、絶対に読んでもらいたいおすすめ作品を紹介します。
佐野洋子作品の魅力
佐野洋子先生は、1938年生まれ。
武蔵野美術大学デザイン科を卒業した後、イラストレーターとして白木屋の宣伝部で活躍していました。
その後、33歳で絵本作家としてデビューします。
1990年には谷川俊太郎氏と結婚し、6年後の1996年に離婚します。
2003年に紫綬褒章受章。
2004年、エッセイ集『神も仏もありませぬ』で小林秀雄賞を受賞します。
2004年には乳がんの摘出手術を受けましたが、骨に転移していたことが判明。
2006年に刊行されたエッセイ集『役にたたない日々』の中で、がんで余命2年であることを告白します。
2010年11月5日、乳がんのため東京都内の病院で亡くなります。
72歳でした。
最後のエッセイ集のタイトルは『死ぬ気まんまん』。
絵本作家としてデビューしてから亡くなるまで、魅力的な絵本やエッセイを多数出版してきました。
佐野洋子先生のおすすめ絵本作品
すーちゃんとねこ
誰しも持っている気持ち「いじわる」をテーマにした絵本。
ねこちゃんが木に登って取ってきた風船を、すーちゃんが意地悪をして横取りしてしまいます。
でも、頑張り屋のねこちゃんが取った行動は意外なものでした。
クレヨンで描かれたイラストは、優しいタッチで眺めているとホッとします。
幼い子供同士でありがちな、ちょっとした「いじわる」と自然な仲直り。
読み終わる頃には、「よかったね」と思わず笑顔がこぼれるはずです。
おじさんのかさ
りっぱな傘が濡れるのが嫌で、傘をさそうとしないおじさん。
そんなある雨の日、「雨がふったら、ポンポロロン」 と歌う子どもたちの声に合わせて、はじめて傘を広げてみました。
「傘は傘らしく」そのもの本来の役割通りに使うのが、傘にとっても幸せなのかもしれません。
だってだってのおばあさん
「だって、わたしはおばあちゃんだもの」それが、くちぐせのおばあさん。
でも、99さいのお誕生日に、猫が買ってきたろうそくは、たったの5本。
そんなろうそくの数を見ただけで、99歳から一気に5歳まで気持ちが若返るおばあさん。
年齢や環境を言い訳にしがちな大人ほど、読むと新たな気づきが得られそうな絵本です。
おぼえていろよおおきな木
本当に大切なものは、失ってはじめて知ることができるのかもしれません。
邪魔に思っていた木を切り倒して、せいせいするはずだったおじさん。
でも、なんだかさびしい、悲しい気持ちに襲われてしまいます。
無くしてみてはじめて、おじさんは自分を支えてくれた木の存在に気づけたのかもしれません。
100万回生きたねこ
ある時は一国の王の猫、またある時は船乗りの猫になったりと、100万回生まれ変わっては、様々な飼い主のもとで死んでいく猫。
これまで猫を飼った100万人の飼い主は、猫の死をひどく悲しんでいました。
でも当の猫は、まったく悲しいと思っていません。
なぜならば、猫は飼い主のことが大嫌いだったから。
そんな猫が、白猫と結婚し、子どもができ、年老いていく。
白猫が隣で静かに動かなくなったとき、猫ははじめて悲しくなって泣きます。
愛されるよりも、愛することの大切さに気付かせてくれる名作です。
佐野洋子先生のおすすめエッセイ作品
私の猫たち許してほしい
佐野洋子先生の生い立ちが書かれたエッセイ集。
少女時代を過ごした北京、リトグラフを学んだベルリンの生活、猫との不思議なふれあいや花に寄せるひそかな想い。
生きるものすべてをみつめる暖かい目と、ひとそよぎの風にも自分の存在を確かめるするどい知覚力で、自身の生いたちと日常がオムニバス風に綴られています。
本書を読んだ後に絵本作品を読めば、より深く佐野先生の作品を理解できそうです。
嘘ばっか 新釈・世界おとぎ話
誰もが知っているおとぎ話を、佐野先生の独特の感性で描き直した作品集。
シンデレラは度外れた美貌と頭脳でママ母を辟易させる野心家。
浦島太郎はただ若いだけの無神経な男。
赤ずきんの真実は驚きです。
「おとぎ話は心の傷」という著者が試みた、26篇の絵入りパロディは、ウソと思いつつホントと頷く、おかしくて怖い現代の寓話として描かれています。
ラブ・イズ・ザ・ベスト
「雨が降るとラーメンが売れる」というタクシー運転手。
美空ひばりのせいで不動産屋になった男。
お中元のポスターを作っていた若き日の篠山紀信。
毛皮のコートの上に座り込んで『大鏡』を読むお姫さまのような美人。
「人をあやめちゃいけないよ」とのたまう小父さん。
人生いろいろあるけれど、どんな時にもラブ・イズ・ザ・ベスト。
人生でいろんな経験を重ねてきた、いい大人に読んでもらいたいエッセイ集です。
さいごに
佐野洋子先生の作品は、絵本とエッセイでその魅力が全く違います。
人生において、大切なことをやさしく諭してくれる絵本。
そしてエッセイでは、歯に衣着せない率直な物言いや、常識にとらわれない目線で世間を鋭く指摘しています。
『100万回生きたねこ』以外にも、魅力的な作品がたくさんあっておすすめですよ。
それじゃ、またね。