こんにちは、いちもくです。
京都の飲食店を語るとき、よく耳にするのが「一見(いちげん)さんお断り」。
人を寄せ付けない、冷たい印象を持つ人も多いのではないでしょうか。
一見さんお断りの店に入ろうと思ったら、お店の馴染み客に紹介してもらうか、一緒に訪れしかありません。
店側からすれば、せっかくの売り上げのチャンスを逃すことにもなりかねないルール。
でも不思議なことに、そんなルールを350年以上守り続けることで、経済規模を少しずつ拡大しているのが、京都花街のお茶屋さんなんです。
そんな一見さんお断りを、経営学の観点から解説した本が、「一見さんお断り」の勝ち組経営です。
本の概要
「一見さん」という言葉は、あるお店に初めて訪れた人のことです。
「一見さんお断り」とは、今までその店を訪れたことがない人が、入店を断られることを意味しています。
一見さんお断りの店に入るためには、店の馴染み客に紹介してもらうか、一緒に訪れる必要があります。
でもこれは、店側からすればみすみす売り上げのチャンスを逃すことになりかねないルール。
不思議なことに、そんなルールを350年以上守り続けることで、経済規模が少しずつ拡大しているのが、京都花街のお茶屋さんなんです。
本書の著者は、公認会計士・税理士として活躍する髙橋秀彰さん。
会計学の観点ではなく、経営学の観点から「一見さんお断り」について書かれています。
お茶屋とはどんなお店なのか?
お茶屋とは、京都などの花街で、芸奴を呼んで客に飲食させる店のことです。
料亭とお茶屋の違いは、厨房が用意されているかどうか。
料亭では、店内にある厨房で調理して、料理を客に提供します。
お茶屋の場合は、厨房が用意されておらず、料理は仕出し屋から取り寄せるのが基本です。
お茶屋を訪れる客は、宴会するのが目的です。
当然、店側も楽しい宴会にしようと、最大限努力します。
楽しい宴会にするためには、店側は客のことを深く知る必要があるんです。
どんな料理が好みか、どんな舞が喜ばれるかは、客によって違うもの。
だから自然と、客に合わせて馴染みの仕出し屋や芸奴が決まってきます。
代金の支払い方法についても、お茶屋には独特のルールがあります。
お茶屋は全て掛け払い。
料理代やタクシー代、お茶屋を出た後に行くお店の支払いまで、すべてお茶屋が一旦立て替えています。
お茶屋と客に信頼関係が築かれているからこそ、成立するシステムなのかもしれません。
客が店を選ぶのではなく、店が客を選ぶ
「一見さんお断り」には、客が店を選ぶのではなく、店が客を選ぶという意味が込められています。
多くの飲食店では、客に選んでもらおうと様々なキャンペーンを打ち出したり、ポイント制度を導入して顧客を囲い込もうと日々努力しています。
その理由は、常に新規の顧客を開拓し続けることで、売り上げと利益を維持拡大したいから。
でも「一見さんお断り」の店は、敢えて新規顧客を積極的に受け入れないことで、300年以上経営を続けられてきました。
「新規顧客を受け入れない」ことで生まれるメリットとは何なのか。
本書の中に、その答えが経営の視点から書かれています。
お茶屋が350年間経営できている理由
京都花街のお茶屋が、350年間繁栄できた理由とはいったい何なのでしょうか。
繁栄できた大きな要因の1つは、「良い顧客」に「良いサービス」を「お得と思ってもらえるような価格」で提供してきたからです。
本書によると、お茶屋の代金は想像していた以上に良心的。
良い顧客が集まれば、無駄なトラブルを避けることもできるので、結果的にコスト削減につながるのかもしれません。
オーダーメイドは価格競争に巻き込まれない
お茶屋も他の飲食店と同様に、料理やサービスを提供することで利益を得ます。
「一見さんお断り」のシステムを導入すれば、提供するサービスは顧客に合わせた完全オーダーメイドにすることができます。
更に、顧客に合わせてサービスをマニュアル化することも可能。
サービスの個別受注生産が実現できる「一見さんお断り」のシステムが機能すれば、価格競争に巻き込まれることはなくなります。
これこそが、お茶屋が350年間続いてきた真の理由なのかもしれません。
さいごに
顧客満足を追求することで、「一見さんお断り」にたどり着くのかもしれません。
価格競争や薄利多売、広告宣伝とは無縁の、お茶屋の「一見さんお断り」経営。
時代を超えても決して色褪せることのない、経営の本質を学べる本です。
それじゃ、またね。